-
根本タケシTakeshi Nemoto
BIOGRAPHY
東京生まれ、早稲田大学中退、東京写真専門学院(現 東京ビジュアルアーツ)卒業。物撮りを中心に広告写真家として活躍。早くからデジタルワークフローに取り組み、デジタルモノクロ出力では、草分け的存在。特に、インクジェットプリントでは独自の方法論を確立した。一部ではこの出力方法を<Nemoto Method>と呼称されている。「デジタルフォトとは、撮影、処理、プリントが三位一体となった表現方法」と言うのが持論で、啓発セミナーも多い。
撮影技法やデジタル出力に関する著述は、様々な媒体に多数掲載されている。
若手の育成にも力を入れており、現在は日本写真芸術専門学校主任講師。
2006年、東京下町・深川をテーマにした「深川散歩」を発表、その後、古くから日本人が持っている心象風景を題材とした作品を数多く発表。
また、プリント作品販売を日本国内だけでなくヨーロッパ等でも行ない、現在ではその販路拡張にも情熱を注いでいる。
公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員
STATEMENT
心象風景
人は誰でも、心の中で<漠然とした風景>を見ています。
この風景が具体性を帯びてくる時それを心象風景と呼びます。
日本人は古来より、心象風景を心の中から解き放つ、様々な<アートフィールド>を開拓し、<文化>として作り上げてきました。
<建築><作庭><華道><茶道><武道><能><歌舞伎><日本画><禅>などなどです。
このDNAを写真に反映させる。これが私のライフワークです。
災害大国日本にあって私は、誕生以来、様々な自然災害に遭遇し、見聞きし、その度に心象風景は揺れ動きました。
いや、現在も揺れ動いています。
この揺れ動く<はかない風景>を追い求める事が、ある時点での切り取られた現実を見つめる<目力>を強めることになります。
私は、これからも、私自身の心象風景を追い求め、プリント作品として具現化していきます。
QUOTE
プリント作品を発表する事を仕事と位置づけてからかなりの時が経ちました。この仕事では、<用紙との出会い>がとても重要になります。
銀塩時代<フィルム作成><現像><プリント>そのほとんどがブラックボックスのように、作家の侵入を拒んでいました。デジタルのワークフローでは、この全てに作家が関与出来ます。唯一関与出来ないのがインクと用紙の製造です。特に用紙は素敵な出会いが無ければ、自分らしい表現が出来なくなります。
あるとき<ILFORD GALERIE>という素晴らしい用紙があるのに何故使わないのか?と質問されました。そのとき見せられたプリントが、初期のアンリカルティエブレッソンの銀塩プリントのような肉厚の黒で、衝撃を受けました。それから<ILFORD GALERIE>は私の良きパートナーとなりました。未だ、納得のいくプリントとは言いがたい、というより、この用紙はもっと深い可能性を秘めているのではないかと模索している段階ですが、素敵な将来性を予感させてくれます。この出会いを大事にして、今迄以上に作品制作に励みたいと思っています。